お雑煮

美味しいね

E♭Bassのマウスピースなんもわからん

熟達した金管楽器奏者達は口を揃えて言います。

『マウスピースは"沼"

 

お久しぶりです。理想の音が思うように出せないという悩み、多寡はあれど奏者万人の共通だと思います。多分に漏れず現在の自分もそうです。

一般的に金管楽器の出力は

『奏者×マウスピース×楽器』

と表されます。(掛け算順序問題に配慮している +1145141919点)

E♭管を始めた当初は自分の伸び幅が大きいので気になりませんでしたが、成長曲線のプラトーに達する頃はやはり停滞を感じてしまいます。

超人ならば自己の鍛錬で壁を乗り越えてみせる、もしくは壁など感じないのでしょうが、畜群たる私はマウスピースの換装という安易な選択に走ります。殊にチューバにおいては気軽に楽器を変えられる経済的富裕層は考慮しません。

しかしながら、マウスピースは個人の骨格・楽器との相性が明確に存在するため少なからず出力に影響し、そして他人の意見が全くと言ってよいほど参考にならない部分であります。一般的に良いとされているモデルは確かに存在しますが、出力が必ずしも望んだ音になるとは限りません。似たリム径・シャンク径のマウスピースだからと言って同じような音が出るわけではありません。まさに一期一会。

今回はそんなマ活のお話。

 

 

2021年12月、E♭チューバ(YEB-632S)を中古で購入。

E♭管は中学1年、チューバを始めたての頃1年間触ったきりで、以降10年以上B♭管しか触っていませんでした。当時使っていたマウスピースは確かYAMAHA BB-64、初級者向けのモデルですね。

試しにB♭管で使っていた「侍」で吹いてみたところ、鳴るツボを明らかに外しているような吹奏感。やはりE♭管用のマウスピースが要ります。

この時点で少なくともアンサンブルコンサートへの参加は決まっていたので、ひとまずはB♭管との差別化を図り、『明瞭感のあるクリアな音』、そして『高音から低音域まで幅広く音のコントロールが可能』な点を重視することにしました。

お迎えしたのはYAMAHA BB-CAROLINO(セルジオ・カロリーノ シグネチャーモデル)。詳しいレヴューは後程載せますが、先に挙げた点をいずれもクリアしており、レスポンスの良さが決め手となりました。アンサンブルでの使用感も申し分なかったのですが、後に英国式ブラスバンドE♭Bassへの適性は低いと感じるようになり、マウスピース再選定に至りました。

 

本題に入ります。

選定基準を書き出しましょう。

・吹奏感として抵抗は強めだけど、少ない息でもすべて音になるような変換効率の高さ。

・口当たりは固定感強めで安定。できれば銀メッキ。

・英国式ブラスバンドでの低音域を担う重厚さと密度のある音質。

・高音域やpppにも十分に響きを付与し、空鳴りしないこと。

・低音は割れにくいが割りたいときは割れるくらいのキャパシティ。

・けど音域はソロ曲レベルまでは求めない、hiE♭~lowE♭まであれば十分。

・リム内径、シャンク径、カップは問わず。(経験則としては32.5mm前後のリム径を好む)

 

こちらをもとに約2か月かけて試奏に帆走しました。

滅茶苦茶言ってるし大部分は練習によって解決可能であるという指摘は受け付けません。

 

 

今回の選定にあたり試奏したもののうち、代表的なモデルを紹介します。

わざわざ前置きするまでもないことですが、あくまで個人の感想であり特定のマウスピースに対する誹謗中傷を意図するものではありません。

 

YAMAHA BB-CAROLINO

リム内径:32.44mm スロート径:7.5mm

8ヶ月間使っていた初代相棒。一番音を作りやすい。自分の技術やアンブシュアが甘い部分も拡張してくれるような印象。ただ音が軽くなりがちでppp/fffに耐えられない。某チューバ奏者グループは『化学調味料的なアレ』と評していたが確かにそうかも。

ポケモンで例えるとゲッコウガ

 

YAMAHA BB-BOBO-SOLO-ST

リム内径:32.20mm スロート径:7.5mm

ソロマウスピースとして有名。セルジオと似た吹奏感だが音のツボが少し遠くにあり個人的に当てにくい。変換効率悪い。自分がセルジオを差し置いてこちらを選ぶことはなさそう。

ポケモンで例えるとルカリオ

 

PERANTUCCI PT-64

リム内径:32.00mm スロート径:7.8mm

F管で人気。B♭管でしばらくPT-82を使っていた時期があるのでアンブシュアは比較的馴染む。抵抗浅め。pppは申し分ないがfffで音が割れやすい。馴染めばセルジオより幅広い場面で使えるかも。

ポケモンで例えるとウォッシュロトム

 

VOLARE BT-01

リム内径:32.03mm スロート径:7.5mm

皆さんご存知ヴォラーレ。今回試した中で唯一金メッキ。そのせいか口当たり吹奏感音質音域すべてにおいてまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーじで合わなかった。1分だけ試して対話を諦めた。ここまで相性が悪いと「嫌い」と言っても良い。もう二度と触らないよ、ばいばい。

ポケモンで例えるとオニゴーリ

 

ROMERA BRASS Shimpei 38「忍」

リム内径:32.20mm スロート径:7.5mm

ボボソロと同じリム内径・スロート径。「侍」の時も思っていたけど丁寧にアンブシュアとブレスを作ったときは上質な響きになるけど、少しでも崩すと濁りが強調されるような感覚。体力持っていかれる。吹奏楽だったらかなり合うかもしれないが英国式ブラスバンドには適さないか。

ポケモンで例えるとカプ・レヒレ

 

Bach 24AW

リム内径:31.25mm スロート径:8.33mm

チューバ吹きなら皆一度は使ったことがあるであろうモデル。調べた限り国内の英国式ブラスバンドだとB♭E♭どちらにも採用されうるらしく、かなり人気。初級者向けのイメージだったが久しぶりに吹いてみるとなかなかダークな音に仕上がるし取り回しも良い。リムが狭いので慣れるまでに時間はかかりそう。音域とキャパシティは狭い。某後輩はこのモデル以外のマウスピースを使ったことがないらしい。童貞に操を捧げる処女のような信念貫いてて羨ましい。

ポケモンで例えるとメタグロス

 

Denis Wick Classic 3L

リム内径:31.25mm スロート径:8.78mm

24AWを原型にデザイン。E♭Bass界隈ではこのモデルがスタンダードらしく、何が合いますかという質問のほとんどで名前が挙げられていた。24AWよりもスロートが広いためか、響きは豊かで申し分ない。強いて言えばまだ軽さが残る気がしたが、購入直前までこのモデルにしようか迷っていた。

ポケモンで例えるとガブリアス

 

Denis Wick Heritage 3L

リム内径:31.25mm スロート径:8.78mm

形が特徴的。内部はクラシックとほぼ同型なはずだがリムの薄さのためか出力は全く異なる、というか音が軽薄すぎる。せっかくの24AW系統の音質が損なわれているうえに機動性に振り切るでもない。ホルンやトロンボーンのヘリテージはよく見たことがあるがチューバには全く合わないと思う。デザイン性に振り切ってしまった悲しい個体。

ポケモンで例えるとアブソル。

 

Alliance Les Neish

リム内径:31.25mm スロート径:8.68mm

こちらも24AWを原型にしたモデル。率直に言って一目ぼれしました。なんとか試奏機会を探していたのですがどの店頭にもこのモデルが置いてなかったので地雷覚悟で通販で購入。ここまで24AW系統を3連打したのはこのため。実際の吹奏感はClassic 3Lに近いがスロートがわずかに狭いためか音がまとまり密度が高くなった印象。少ない息で回せるのでpppのコントロールは容易。マウスピース自体の重量もあるためfffも破綻しない。唯一の懸念点は今まであまり使ったことのないリム内径であることだがどうせ慣れるので些末な問題であろう。そして何より意表がつける。

ポケモンで例えるとサザンドラ

 

 

というわけでLes Neishをお迎えしました。シグネチャーモデルとか特別感のある名前に弱すぎるだろお前。

 

沼に落ちたオタクは出口のない主観的評価の回廊に囚われ続ける性を背負っています。それなのに時折不安に襲われては通販レビューを読み漁り一喜一憂し、同担を捕捉した暁には逆張りという虚栄心が首を擡げます。オークションサイトに投げ売りされているGIDDINGSは藻掻きながら沈んだ哀れな開拓者の墓標です。これを読んでいる貴方が佳き出会いに恵まれますよう。

 

 

熟達した金管楽器奏者達はこうも言います。

『思っていた程音が変わらないことも多い。要は気持ちの問題』

 

P.S.

10月9日に武蔵野市民会館で会いましょう。